縁あって、本書のブックレビューを書かせていただけることになりました。
大好きなトム・ウェイツの本について書かせていただけるなんて身に余る光栄です。

■この本はこんな本。
トム・ウェイツっていう人の伝記(存命)。トム・ウェイツの半生と作品紹介を主軸に、1950年代以降の文化、映画、音楽、文学について抄録。ビートニク、フランシス・コッポラ、フランク・ザッパ、ジャック・ケルアック、ウィリアム・S・バロウズ、etc…。記載された名詞の山を漠然と読み流すのはもったいないので、本書を読まれる方には是非、マトリックスの作成をお勧めします。縦軸に10年ごとに年代を、横軸に気になるキーワードをご記入下さい(音楽とか映画とかエンタテナー界裏事情とか・笑)。読了後、素敵な俯瞰図が出来上がることでしょう。温故知新の宝庫です。
■トム・ウェイツはこんな人。
1949年12月7日、カリフォルニア州生れ。ミュージシャン、俳優、詩人。母方からノルウェー人の血を、父方からスコットランド系とアイルランド系の血を受け継ぐ。アイロニカルなコメントでインタビュアーを煙に巻く癖あり。グッときた名言は「俺は酒で問題なんか起こさない。酒さえあればな」。今となっては世界的にとても有名なアーティストなれど、売れない頃、フランク・ザッパと周った3回のツアーにて「5000人から一万人の客の前にたった一人で出て、野次とブーイングの嵐」を浴び、ホッケー場では3500人の客から「フルボリュームで帰れコール」をくらう。にも関わらず唄い続け93年『ボーン・マシーン』でグラミー賞最優秀オルタナティヴ・アルバム賞受賞。ミュージシャンの間でも人気が高く、イーグルス、ロッド・スチュワート、ブルース・スプリングスティーン、ラモーンズといった面々がトム・ウェイツの楽曲をカバー。キース・リチャーズに至っては『レイン・ドッグス』でギターを演奏。ちなみにウェイツの得意楽器は「ボキャブラリー」。イカス。
■ウェイツのファンはこんな人。
ジョニー・デップが「ウェイツのアルバムなしに僕は生きていけなかった」と言い、オダギリ・ジョーが「僕にとってトム・ウェイツは音楽の神様」とコメントしているなら、私には、もっと、ウェイツについて語ってほしい人物がいた。その人物の名は尾形回帰。現在、氏はHEREというバンドで‘主演’を張るパフォーマーだ。都内を中心に定期的にライブを行っておりますので詳細は→http://www.here-web.com/をご参照ください。彼が作った曲にトム・ウェイツの名が出てくることや、彼のライブパフォーマンスでウェイツについて言及する場面に遭遇するにあたり、この人もトム・ウェイツのファンなのだということを知るに及んだ。心酔するアーティストと好みが被るのって嬉しい。私の中で、ムクムクと、尾形回帰氏よりトム・ウェイツへのコメントが貰えたら、そしてそれを自分のレビューで紹介することが出来たなら…という欲望が湧いてきた。私と氏とは特段面識がないものの、「トム・ウェイツ本なら」ということであろう、幸甚にも、巡り巡ってコメントがいただけるという運びとなった。氏はウェイツについてこのように寄せてくださった。「トムの歌が俺に愛や夢、そして人生を教えてくれたんだ。」この時点で感無量である。彼を中心として構築される音楽+α(+αが何であるかは、ライブを観てのお楽しみ)は観る者を“いつかの時代のどこかの世界”に誘う。ウェイツがかつて披露した数々のライブがそうであったように、胸を射抜く一夜限りの夢物語がそこでは繰り広げられる。音楽の海はまだまだ広く、未だ知らない新しい音楽の楽しみ方があるのだと思わせてくれる尾形回帰@HEREのライブは(ウェイツのCDが必聴なように)必見だし、私はこのレビューをこういう風に書くことができて限りなく幸せ者だと思う。
■この本の企画、編集を手掛けたのは城山隆。
本書の下敷きとなった本『酔いどれ天使の唄』(大栄出版)を手がけた編集者にして国内随一のトム・ウェイツマニア。『酔いどれ天使の唄』を発行するにあたり、当時勤務していた大栄出版の上役にウェイツの名曲〈トム・トルバーツ・ブルース〉を延々と聴かせまくり(!)出版を勝ち取った。
『酔いどれ天使の唄』は発売後、翻訳音楽書としては異例の2万部というセールスを記録。以降、城山は5冊のトム・ウェイツ本の編集を手掛けることになる。またアルバム《ミュール・ヴァリエーションズ》に関するインタビューをレコード会社に依頼され、ウェイツ本人と対面。そして今年7月、なんとパリ公演に行ったとか。遠いな、ヨーロッパ…けど、そういうの、なんだかわかる。むしろ、むちゃくちゃ、わかります。
■本書を訳したのは金原瑞人(かねはらみずひと)。
国内きっての人気翻訳家。芥川賞作家金原ひとみの実父。読みやすい訳をつける方です。
■このレビューを書いている私は、本屋の売り子です。
二十歳の頃に聴いた『レイン・ドッグ』にノックアウトされました。
■いまこれを読んで下さっている貴方は? 
ウェイツを聴いたきっかけや、どの曲が好きとか、本書について、とか、感想をきかせてください。
書店にて、尾形回帰@HEREのライブで待っています!
読んでくださって有難うございました。
リブロ汐留シオサイト店、汐留パート2店 遠藤慎子